沈黙 -サイレンス-

HistoricalReligious

本当は上映中に見たかったんだけど、時機を逃してずっと気になってた作品。

遠藤周作の代表的な作品の一つ。
原作を読んだ時には時代の狂ったような強制力の恐ろしさと人間の弱さに鳥肌モノだった。

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日本のキリシタン弾圧政策は歴史に深く刻まれて、大量虐殺の非道さや踏み絵や拷問による激しい責めと、逆らい続けた人々のことなどは周知のことであろう。
ただしそれはその時代に生きていない傍観者の我々の認識。

この小説のキモはひとつは追放、迫害、拷問、果ては殺害されながらも次々と布教のために渡ってくるパードレたちの観点から見ていること。

そう、国対国としては貿易や利権問題などとからむ部分はあったかもしれないが、ひたすら心よりキリストの存在を信じ、その教義が絶対の正義だと思っている人々にとっては、苦難の中でもがいてる人々を救済することそのものが純粋に目的であったかもしれない。

しかし救おうとするその思いがより多くの人々を苦しめて地獄を生み出してしまうという矛盾。
それに気づいた時、果たして本当の救いとは何かを深く考えざるを得ない。

遠藤周作の作品だけど、日本映画ではない。
「タクシードライバー」や「ヒューゴ」などの名作を作り出したマーティン・スコセッシ監督なのだな。
そして実は彼は「最後の誘惑」という作品で、人間としてのキリストとユダを描いているのでちょっと今回穂作品にも通じるところがある。

ただ、この映画が始まって最初に違和感を感じたのが、パードレたちがちょっと若い良い男すぎて胡散臭い(笑)
なんせスパイダーマンとカイロ・レンだもんで。。。

そして次に登場シーンからキチジローがワイルドで眼光が鋭く強い精神力に見えた。(窪塚洋介さんだからね)
確かにずっと話を追っていけば立ち回りからみたらしたたかな強さも感じられるが、表面上は人間の弱さを具現化したような小男で、卑屈で情けなくて狡くて、でも悪人にもなりきれず、何かに縋って信じていないと生きられないという、どうにも歯がゆい弱さの塊のような役回りだったような、、、
(でも後からこれがジワジワ良い味を出して来るんですがね)

日本人の精神からすると迫害された側と政府にばかり目が行きがちなので、密航してまで危険を承知で乗り込んできたイエズス会の神父たちが何を思いどう決断してきたかが図りがたい

だからこの神父側の視点から描いた作品をキリスト教国の人々が受け取って演じる方がより自然な気もする。
強い信念を持って渡ってきたにしても彼らも1人の人間なのである。
苦しみもすれば悩みもするし迷いもするだろう。

理想は持っていても儘ならぬ状況。理想を掲げるほどに悪化していく状況の中で、強さと弱さの相反する人間の揺らぎをまざまざと見せつけられて人間であるが故に思い悩む。

繰り返し襲い掛かるのは絶望と恐怖と無力さばかりで一筋の希望もない。
どれだけ強い信仰心を持ち祈りを捧げでも、状況は何一つ変わらず救いはない。届いているのかさえ自信が無くなっていく。
自分の存在が純粋な多くの人々を地獄の苦しみに誘って行く恐ろしさは自分自身の痛みより激しく刺さっていく。

エリ・エリ・レマ・サバクタニ

この作品は決してキリスト教自体を否定するものではなく、信仰を完全に棄てた心変わりの話ではない。
だが恐らくタブーに属する面もあるのではないかという気配もあって、どこまでキリスト教がわの人間が踏み込めるのか?という危惧はあったが、大筋原作に忠実であった。

特に弾圧する側の役人達は、悪鬼のごとく理解もない無知で野蛮な存在に描かれる可能性は途中まであったのだが、意外と立場や国民性など汲み取ってくれたようだ。
日本という風土に育まれる独自の神の観念は、やってることは一緒に見えても西洋のそれと同一ではないというのはなんだか頷ける。
そして人の心は暴力で征服できるものでは無い。

最後の下りが長々としてちょっと釈明っぽくなってしまた感じはあるが、数多くs出て来る日本の出演者も渋い配役でなかなかよく仕上がった作品だと思います。

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てか、日本でも1971年に篠田正浩監督が撮っていたんだね。岩下志麻さん、三田佳子さんなどが出演してるというので見て見たいけど丹波哲郎さんがフェレイラって。。。。。

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