時計じかけのオレンジ

Crime

2001年宇宙の旅の後に作られた、いわば爛熟期の名(迷?)作ということで以前から気になっていたひとつ。
主人公の狂気じみた帽子姿の顔のアップ、片目だけばっちり上下つけたつけまつげなどが印象深い。

字幕で見たので、ものすごいスラングすぎて翻訳できない(もしくは放送禁止用語)んだと思っていたが、なんとそれは未来の話で造語だった。

若さゆえのもてあましたパワーをすべて悪事に集結させてうっぷんをはらしているといった感じで、とにかく前半の狼藉は人道外れてひどい。
自分たちさえ楽しければすべてよしといった雰囲気で、暴力、押し込み、強姦などなんでもありの大騒ぎで、しかもそれを楽しんでいる。

周囲の無関係な人たちを傷つけまくり、それがどんな結果を生むかも考えちゃいない。
渋谷で昔あった「浮浪者狩り」なども彷彿とさせる。

彼らのたまり場もわざと低俗の極みのような趣味の悪さを描き出すが、それ以上に主人公の家の各部屋、それにお母さんのファッションセンスがぶっとびすぎていて笑える。
彼らが押し入る家もなべて悪趣味の権化のようなしつらえだ。

やがて調子に乗りすぎて遊び半分にある女性を殺害してしまったことと、仲間内での権力争いの禍根が引き金によりひとりだけ逮捕される。

実際やんちゃを通り過ぎた悪事を働くメンバーやグループがいくつもある中、一人だけ押し込めたところでいかほどの効果があげられるのか?
もちろん社会に害を与える者を一人ずつでも減らすのが無意味なことではないが、反省する気もないまま育っていった他の若者が社会にそのまま出た弊害は予測できるだろう。。。

一度捕縛した不道徳な人間を確実に更生して出所させる方法として「ルドヴィコ療法」というのが登場する。
事実は更生などという人間性を維持するものではなく、強力な洗脳と投薬で拷問まがいの治療を施して、恐怖と苦痛により無害化するというたぐいのものであった。
人格破壊は果たして療法と呼べるのか?

流れ的にみるとまさに「因果応報」。
自分がしでかしてきたことを振り返れば、それだけの報いが来るのも当然とも受け取れる。

だが、前半の人間の欲望、エゴによる他者への人間の尊厳の踏みにじりと、機関による「よりよき模範市民」を作り出す自己判断の剥奪とはどう違うと言えるだろうか。
というような問いを投げかけた作品じゃないかと感じた。

最後の「元に戻ってよかった」は一体何に対してよかったのだろうか。。。。

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