惑星ソラリス

ArtisticSF

先日メジャー映画を3本まとめて見たところですが、マイナー系小劇場の方では現在「タルコフスキー生誕80周年記念映画祭」を開催中。

その第一弾が「惑星ソラリス」。
この後、週代わりで「ノスタルジア」、「ストーカー」、「僕の村は戦場だった」、「鏡」、「ローラーとバイオリン」、「モスクワ・エレジー 〜タルコフスキーに捧ぐ」と続きますが、G.W.もはさむので全部は見れないだろうなあ。。

この「惑星ソラリス」は最近のものではなく、1972年の映画(日本上映は1977年)なので見る機会はなかったけれども、SFの名作として名前は知っていました。

当時はCG技術もそんな発達しておらず、現在のように3DCGでなんでも表現できちゃう時代とは違う。果たしてどんな表現をしてるのだろう?と興味が強かったのですが、なんと前衛的な作品であったことか!

SFと言ってしまうとちょっと違うかなという気がします。ツインピークスやアンダルシアの犬を髣髴とさせるアート的な要素の方が強いかな。

流れる水、揺らめく水草、降り注ぐ水、森、静かな池、霧。。。。
最初の方は、セリフがまったくなく、情景と音だけの世界が広がる。

見覚えのある、首都高の映像が延々と続くと思ったら、それは未来都市のイメージなのだそうな。
途切れることなく続く、無機質な車とビルの群れは、当時異質な印象を与えたのだろうね。

この映画は視覚的だけでなく「音」もまた不思議な効果をもたらしている。BGM、映画音楽とも違った環境音とか効果音的なものが、映像と重なって一種シュールな世界へいざなう。

決して静かではなく雑音、不協和音と言ってもいいぐらいなのに、なぜか不思議なヒーリング効果もあるようで、何度も睡魔に引きずり込まれそうになりました(笑)たいくつだから、、というのとも違う。
さらに控えめに流れるバッハを中心とした聖歌の数々も美しい。

本来2部構成なのだが、今回は続けて上映したので165分と長い。そのためか予告や宣伝もなくいきなり本編がはじまって、ちょっと心の準備もできなかったのだけど(^^;)露西亜語なので、聞き取れたセリフは「ハラショー」と「ストランド」くらい。。。

2部に入る頃には一気に話が展開して意識もシャッキリ。
波打ち渦巻く海。霧に包まれる惑星ソラリス。宇宙ステーションの窓から見える景色はそれ以外何もない。
しかし、それはただの海ではなく、人間が接触するには危険すぎる知性を持つ有機体であった。。

と言っても海が襲い掛かってくるわけではありません(笑)
人間の「意識」「良心」「記憶」「愛」「罪の意識」というものが及ぼす作用。自分自身の内面との葛藤。また、「人間」とは一体何であるか?という疑問を投げかけてくる。哲学的な作品です。

「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」は、姿かたちは同じでも、共感とか思いやりとかそういう感情面を引き合いにだしていたが、感情を持ち、記憶を引き継ぎ、涙や愛や絶望も知っていていたら、細胞組織のレベルで人間は割り切ることができるのか?

正直、話の流れやおおまかな訴えるところはわかるけど、この映画のすべてを理解できたとは言えない。
ところどころに象徴的な映像が挿入されていたり、画面に登場はしたがその後の説明はないものなどもある。

また、カメラがメインで狙っているのとは別の、ちらちら画面に映りこむオブジェクトや人などが妙に気になるものがあったりするのだよ(^^;)同じ場所のはずなのに、微妙に情景で変わってるところがあったり(意図的にやってるとしか思えない)。。。

美しく、もの悲しく、個人的には非常に興味をそそられる作品でした。最後も結構衝撃的だった。

惑星ソラリス HDマスター [DVD]

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