内なる辺境

随筆・エッセイ

内なる辺境 (中公文庫)

安部公房の随筆3編。

「ミリタリィ・ルック」は、ファッションに象徴されるもの、特にドイツ軍服の持つ異色性について言及している。
現代の若者にとっては主義主張を表すよりも、なんとなくカッコイイ、個性的に見える程度のものかもしれない。

個人的に特に気になったのは「異端のパスポート」。
類人猿時代からの人類の進歩について言及している。博物学的な興味もそそって個人的にはなかなか面白かった。
そういや猿の仲間と見ても、昆虫や木の実や草花以外に、敢えて大きな動物を殺して解体して食べるのは人間くらいかもしれんと思い当たらされた。。。そういうある凶暴性から競争に打ち勝って人類は進化していったのかもしれないね。

遊牧生活と定住生活。
狩猟に限らず各地のネイティブは定住せず、境界線もなく、土地から土地へ渡り歩いて生活するのが自然であった。
それを勝手に線引して土地の所有権を主張して、立ち入るものを攻撃し始めた定住生活の民。
結果的に組織的に協力して生きる事で現在のような発展と文明があったわけだけど。

「夢の逃亡」でも辺境と定住、遊牧の問題を引き継いで、さらにそこからの延長とも考えられる「農民」と「都市的なもの」へと発展する。
「都市的なもの」の代表的な例としてユダヤの民があげられる。

長いこと独自の国家を持たず、歴史も浅いが、文化面でも実は世界的に影響の大きな作品を生み出してきたという事実。。。。

小説のように気軽に楽しめるものではないかもしれないし、自分の浅い知識ではわかったとは言えないが、なかなか興味深い内容ではあった。

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